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英会話ノススメ

私には高校生のころ、おかしな趣味があった。

私っつーか、
私と友達の二人組み(ヘンテココンビ)

それは、外人に話し掛けること。

外人を見るといてもたってもいられない。
老若男女問わず外人に駆け寄る。
人類みな兄弟。
ラブ&ピース
(意味知らない、ラブはわかる。ピー・・ス?)

英語なんてまったくできやしないのに、
自分の英語力を試していた。
(自分を追い込むのが好き)


ある時、禁煙の場所でタバコを吸いながら、
練り歩いてる二人組みのレディー(異国風)
発見。

私たちは、彼女たちを尾行しながら、
作戦を練った。


私 「エコロジーじゃないね」

友達「郷に入っては郷に従ってほしいよね」

私 「・・・同感」

友達「・・・」

私 「ごめん、またやっちゃった」

友達「だと思った。
   得意だもんな、知ったかぶり」

私 「ま、いっか。
   そろそろ郷に入るとするか」

友達「・・・う、うん」

私 「どう出る?どういく?」

友達「話せば解ってくれるタイプだと
   いいんだけど」

私 「つーか、話せねぇっつーの」

友達「あ、そうだった。
   早くしないと。みき行け」

私 「え、私?」

友達「ほら、早く!最初が肝心だからね」

私 「うん、やってみる・・・。」


私は大きく息を吸った。
そして、彼女たちに近づき、
(割と)大きめな声で、
ついでに、妙にかつぜつ良く、


「ノ――スモ――キ―――ン!」


と言い彼女たちの前へ回り込んだ。

ノースモーキン。
あえて、最後に「グ」をつけなかった。
英語っぽさ出してみた。

きょとんとしてる。
きょとんの顔って万国共通らしい。

遅ればせながら友達がきた。
必死で訴えてる。

「ノースモーキー!ノースモーキー!」

あれ?なんか私のとちょっと違うし。
スモーキー?スモーキンじゃないの?

異邦人二人組みは顔を見合わせてなんか喋ってる。
つーか、クスクス笑ってる。

私も負けじと友達とコソコソ喋った。

私 「ほらー、スモーキーとか言うからぁ」

友達「でもさ、スモーキーの
   「モー」のところ、聞いてくれた?
   舌軽く巻く感じにしてみた」

私 「え、気づかなかった」

友達「気づけよー・・・
   無駄に巻いちゃったよー・・・」

そして、何やら彼女たちが話し掛けてきた。
私たちは、自分から行ったくせに、
いざ、話し掛けられるとビクッとなった。

なんか言ってる。
明らかに私たちに向けてなんか言ってる。
顔はにこやか。
どうやら、嫌われてる感じじゃない。
むしろ、好感触。

でも、何もわからない。
言葉の壁って思ったより、たけぇー。

どうしよう。
いつまでも、黙ってるわけにはいかない。
今こそ、自らを追い込むチャンスであり、
そして、自分の英語力を存分に発揮できる時だ。

私は知ってる限りの英単語を思い浮かべた。
頭の中の英和(和英)辞典を<すごい勢いで
パラパラめくった。

そうして、ひとつの単語をたたき出した。


「・・・パ、パードゥン?」


クリア。
第一ステージクリア。

あー、またなんか言ってる。
パードゥンって言ったから、多分さっきと
同じこと言ってるんだろうけど、
本当に同じなのかどうなのか、
それすらわかんない。

友達もカツカツ。
目なんてちょっとうつろになってる。

私は、友達に
「なんか言ってるよ、この人たち」
と言った。

「わかってる。
 なんか言ってる。確かに言ってる」

「どうする?」

「まぁ、見てて」

友達には何か作戦があるらしい。
頼もしい!頼りになる!行け!

次の瞬間、私はちょっと笑った。


「モア スローリー。
 アイ アム ギブアップ」

ギブアップしちゃった、この人!
リングにタオル投げ込まれちゃった!

でもクリア。
第二ステージクリア。

モアスローリーは通じたらしい。
ゆっくりになった。
それにしても親切な二人組み。
こんな、ダメな二人組みに付き合ってくれてる。
やっぱり、人類みな兄弟。ラブ&ピース
(ピ・・・ース・・・?)

ゆっくりだろうと早かろうと、
わからないものは、わからない。

つーか、またタバコに火つけてるし。

もう、いいや・・・。
自由を愛する国から来たんだろうな・・・。

あ―――、なんか言ってるなんか言ってる。
ゆっくり、なんか言ってる。
友達はもう、使い物にならない感じ。
生きる屍っぽい。

私はまた知ってる限りの英語を思い浮かべた。
必死だった。
でも、全部、自分でまいた種。がんばれ自分。

その時、ひとつの言葉が私の頭に浮かんだ。

これはオールマイティーな言葉。
これさえ言ってりゃ、大丈夫だ。

魔法の言葉・・・・ アーハン。

アーハンに世話になろう。
私は彼女たちの言葉のはしばしで、
「アーハン」と言った。
時には、「アーハン?」と
軽く疑問系な感じにしてみたり、
「アーハン オーイャー」などと、
アレンジを加えてみたり。

友達も私の呪文(アーハン)を聞いて、
水を得た魚のようになった。

私たちは、
ひたすら「アーハン」と言い続けた。

私は調子に乗っていた。
しがない高校生の私たちが、異国の人と
会話(?)をしながら歩いている。
すっかり、打ち解けていた。

私と友達は「アーハン」とか「イャー」としか、
言ってはいないものの、
はたから見ればまるで仲良し4人組。

そりゃあ、調子にも乗る。
勘違いもする。
英語が話せるようになった錯覚も起こす。

ふと
「ねぇ、ジェーンとサラは旅行できたの?」
なんて、聞いてみたくなった。
(名前は適当、勝手に心の中でそう呼んでみた)

旅行といえばトラベル・・・?
そう、確かトラベル。

私たちはもう気の合う仲間。聞いちゃえ。


「トラベー?」


やっぱり、最後の「ル」は言わない。
ポリシー。
思いっきり語尾を上げた。
質問しましたよ!ってオーラをガンガン出した。
今、あなたたちに質問を投げかけましたよ!って。

まったく、通じてない。トホホ・・・。

今度は「アーハン?」って言われた。
初めて聞き取れた。
この場合の「アーハン」は、
「え?なに?何て言ったの?」のアーハン。

なんだよ、1回で聞き取れよ。
トラベルかどうか聞いてんだっつーの。
言ってみれば、
トラベルなのか、ビジネスなのか、
ホームシック(?)なのか、カミングアウト
(もうなんでもいい)なのか、
ロンリートラベル(←傷心旅行って意味)なのか、
ハネムーンなのか、
エルビス・プレスリーなのか、
ホワイトハウスなのか、ナサなのか、
ゴーヤチャンプルー(苦い)なのか。

さぁ、どれ?っつーことでしょ。

友達が横で、ボソッと、
「みき、発音わりぃー」と言った。
「アイ アム ギブアップ」に言われたくない。

私はもう1度、ジェーンとサラに向かって、

「いや、だから、トラベー?」

あー、やだなぁ、こんなの。
「いや、だから」って思いっきり日本語だし。
母国語、駆使してる。

思ったとおり、2人は、
目を丸くしながら私をまっすぐに見つめて、

「アーハン?」
(はもってるー。綺麗にはもってるー)

ああ、無常。 発音・・・悪いのかなぁ・・・。
発音良く言うときは
どうやって言えばいいんだろ。

トラベル。トラベー。 トラ・・・ボー・・・?

これだ。これしかない。
ぶっちゃけ自信ないけど、もう、限界。
ネタ切れ。

「トラボー?トラボー?」

2回言ってしまった。
力みすぎて前のめりでテテテって、
出過ぎちゃった感じ。
ついつい2回。うっかり2回。

でも、やっぱり。「アーハン」

また、それか。
アーハンばっかり言いやがって。
読んでたっつーの。
オチ読めてんだっつーの。
つーか、ぱくってるし。
先にアーハン言ったのあたしだし。

もう、彼女たちが旅行できたのかどうかなんて、そんなものどーでもよかった。
興味が失せた。

私は友達に「もう限界。逃げたい。」
と言った。
友達も同意してくれた。
「引き際は鮮やかにいきたいね」と。

私は、腕時計を指差す仕草をした。

「タイムオーバー!タイムオーバー!」

完璧。
友達は笑ってるけど。
ジェーンとサラは気の毒そうに私を見てるけど。

絶対、完璧。

「シー ユー スーン!
 アディオス、アミーゴ!
 ザ・グッバイ!ハローグッバイ!」

最後ぐらい暴走したっていいよね、
という思いを込めて言った。

私の横で友達は、

「カミング スーン!カミング スーン!」

と言っていた。
多分、間違ってる。
私の英語も間違いだらけだけど、
この人のも間違いまみれ。


ま、いっか。
なんとなく、それっぽいし。



           おしまい。

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